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Katsumi
本サイトの運営をしています。FUJIFILMのカメラと喫茶店と開高健の小説が好きです。

自然の音に包まれて。芦名で考える移住のこと。

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2025年の5月。 夫婦で将来的な移住を意識し始めたころ、神奈川県・三浦半島に滞在した。選んだのは芦名にある古民家。映画に出てくる「おばあちゃんの家」のような風貌だった。

秋谷・芦名・佐島などのエリアには以前から惹かれていた。三浦半島の西側で逗子・葉山より下に位置するこのエリアはとにかくアクセスが悪い。喧騒を遠ざけるために意図的にそう作られている。いわゆる「横須賀」と聞いてイメージする観光地化された東側とはまったく違う時間の流れがある。そのため、別荘や保養施設が多い。私たち夫婦が暮らす横浜市と同じ神奈川県内にあって、「閉ざされた奥地」としてミステリアスな魅力がある。

癒しの正体は、音だった。

都市部との違いを最も感じたのは、「音」だった。昼間は鳥の声。夜は蛙の鳴き声。それ以外は、たまに遠くを通り過ぎる車の音がかすかに聞こえるだけ。慣れない静かさに最初は戸惑ったが、それはかつて経験していたものだったことを思い出す。北海道札幌市の外れに住んでいた10代の頃。夏の夜に窓を開けると、虫と蛙の声だけが聞こえてくる。芦名で聞こえてきたのは、昔当たり前にあった「あの音」だった。



都市部に暮らす人が、地方で感じる癒し。風景に気を取られがちだが、その正体は音なのかもしれない。


ただ歩く、特別な午後。

15時頃。芦名から佐島に向かって散歩に出た。

下校中の地元の小学生が「こんにちわ」と声をかけてくれた。人との距離感も都市部とは違う。他には人は歩いておらず、ただ静かな道のりだった。何か目的を持って歩くのではなく、ただ歩くだけ。それがいかに特別なことなのか、慌ただしい日常から距離を取ってようやく気がついた。

丁寧な暮らしの現実は。

滞在した古民家は建て付けが悪く、隙間も多い。5月とはいえ虫が多かった。夏になればもっと多いだろう(ちなみに、妻の嫌いなムカデが出た)。近隣のスーパーも小さく、19時に閉まる。郊外でゆったりと過ごすことを望めば自然を遠ざけることはできないし、利便性を期待してはいけない。およそ都市部の人間が思い描く「丁寧な暮らし」「スローライフ」とは、ライフスタイル誌の中にあるもので、現実の暮らしの中の綺麗な上澄みにしか過ぎない。

これからの暮らしのこと。

「数年のうちに横浜よりも奥へ移りたい」今年になってから妻に相談し、賛成してくれた。今回の短い滞在で地域の暮らしを理解できたわけではないが、自分たちにとって幸せな生活とは何なのか?という輪郭は少しだけ浮かび上がってきた。

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