この記事では、フリーカメラマン(副業も含む)が確定申告を簡単に行う方法をご紹介します。
- はじめて確定申告をするので、記帳や申告をどう行えばいいか心配
- 日々の記帳や確定申告の手間をなるべく効率化したい
- お金はなるべくかけたくない!
- 簿記の知識は無い!
当てはまる方は是非、手順に沿って進めてみてください。
初めて確定申告する方が簿記の知識なしにきちんと確定申告ができる内容になっています。
✔️カメラマンの会計学について
「カメラマンの会計学」シリーズは、フリーランスや副業カメラマンが知っておくべき会計税務のことを分かりやすくまとめたコンテンツです。私は以前会計事務所で働いており、そこからカメラマンに転身した経緯もあるため、まとめてみることにしました。
カメラマンとしては確定申告などに時間を使わずなるべく撮影に集中したいですよね!サクッと確実に終わらせましょう!
記帳・確定申告は会計ソフトを使おう(無料ツールで十分です)
本業であれ副業であれカメラマンとして確定申告が必要(20万円以上の所得がある)な場合は、会計ソフトを使いましょう。日々の撮影の売上や経費の記帳はもちろん、確定申告も簡単にできます。
確定申告といえば「年明けに領収書の山を前に泣きながら電卓を叩く苦行」というイメージがありますが、今は違います。
現在は使いやすいクラウド型の会計ソフトがたくさんあります。
- やよいの白色申告・やよいの青色申告
- Freee
- マネーフォワード
これらのソフトを使う事で、細かい簿記の知識がなくても確定申告くらいなら余裕でこなせます。すくなくとも「やよいの白色申告」は無料で使えますし。あえてexcelで頑張る必要はありません。
今回のガイドは「やよいの白色申告」を使う前提で説明をします。
単純に無料で使いやすいので「やよい」がオススメです。誰でも使えるようによく作り込まれてます。
【重要】まずは知っておこう。フリーカメラマンの確定申告までの流れ
まず、確定申告を行うタイミングは毎年2月16日〜3月15日までの1ヶ月間の間に、前年の1年間の収支についての税金の申告をします。確定申告に必要な書類は1年間の収支をまとめたものですが、それを作成するにはまず何よりも1年間の収支を帳簿につけておく、つまり記帳しておかなければ始まりません。
よく、「経費で落とすから領収書をとっておく」って言うのはこのためですね。
カメラマンの場合は、撮影による売上・経費となった機材や交通費などを記帳しておく必要があります。撮影以外でも収益があった場合(例えばカメラマンとして講師をした、ノウハウをコンテンツとして販売したなど)も記帳は必要です。
- 帳簿の書式って決まっているの?
-
特に決まっていません。手書きでもexcelでもOKです。ただし、経費の仕分けなどある程度の簿記の知識が必要になります。会計ソフトは簿記の知識がなくても帳簿を簡単に作ることができます。
- 確定申告に必要な書類って何があるの?
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確定申告書と収支内訳書が必要です。帳簿をもとに作成しますが、やよいなどの会計ソフトでは記帳内容から自動作成が可能です。
副業カメラマンは収支内訳書の扱いに注意
確定申告の際に必要となる書類に「収支内訳書」があります。
簡単にいうと、売上や経費の内訳、減価償却の計算などを示す書類です。確定申告書は全員提出する必要がありますが、収支内訳書は一定の条件に該当する人だけが提出する必要があります。
✔️収支内訳署の提出が必要な人
- 事業所得がある
- 不動産所得がある
- 農業所得がある
- 前々年の雑所得の収入が1,000万円を超える
ここで問題なのが副業カメラマンで確定申告をする方です。基本的には副業で得た収入は雑所得として扱われます。1前々年に副業カメラマンとして1,000万円以上稼いでいる、という状況に該当する人はあまりいないと思いますので、副業カメラマンは基本的には収支内訳書は必要ないと解釈できそうです。
しかし、以前にこちらの記事で書いたのですが、副業なら必ず雑所得になるとも言えない部分があります。特に、副業であっても定期的に仕事を受注していて帳簿も付けているカメラマンの所得は捉え方によっては「事業所得」とも捉えられます。
副業が一般化している時代の流れに合わせて制度も見直しがされていますので、副業=雑所得であるとは言えなくなってきています。
現状は副業カメラマンの収入は雑所得として捉えて問題ありませんが、今後対応が必要になる可能性もあることを頭の片隅に入れておきましょう。
Step1. 会計ソフト(無料)を導入する
まず、会計ソフトを導入しましょう。
この記事では、無料で使える「やよいの白色申告オンライン」のフリープランを前提に説明をします。
フリーランス・個人事業主向けのクラウド会計ソフトとしてはシェアNo.1です。白色申告用は無料で使えますし機能も十分なので、はじめての会計ソフトとしてオススメです。
会計ソフトは迷ったらとりあえず、やよいシリーズにしとけば間違いないです。
まずは、やよいの白色申告オンラインのページより利用者登録を進めます。
- TOPページの右上「無料で使ってみる」をクリック。
2. フリープランの「無料 申し込み手続きはこちら」をクリック。
3. 名前、メールアドレス、パスワードを入力し、プライバシーポリシー(個人情報)に同意チェックし、「登録する」をクリック
4. 「契約申し込みへ進む」をクリック
5. メールアドレスを入力し、「次へ」をクリック
6. パスワードを入力しログインします
7. 連携サービスのMISOCAは不要なので、そのまま「次へ」をクリックします
8. 契約内容が表示されますので、フリープランで金額が0円になっていることを確認し、下にスクロールします
9. プライバシーポリシーを確認し同意にチェックし「申し込みを確定する」をクリックします
10. サービス利用登録をします。氏名を入力し、事業形態を選択します。フリーカメラマンの場合は個人事業主を選択します(副業であっても同じです)。
11. 会社・個人事業主名を入力します。フリーランスカメラマンの場合は、氏名で大丈夫です。
13. 契約完了画面に遷移しますので、「サービスを開始する」をクリックします
14. 右上に名前が表示されていることを確認し、「やよいの白色申告」の「製品を起動する」をクリックします
15. このような画面が表示されれば、導入は無事完了です。
会計ソフトの導入はこれで完了です!とりあえずお疲れ様でした!
Step.2 撮影の売上と経費を記帳する
いよいよ記帳をします。
カメラマンとしては一般的な「撮影料として報酬を得る」場合を例にします。
- 写真撮影で得た報酬(売上)
- 交通費など、その撮影にかかった経費
基本的にはこの2種類を入力していきます。
2-1. 売上を入力する
まずは売上の入力です。
撮影料金として報酬を得るカメラマンが多いと思いますが、その報酬が売上となります。
- 「かんたん取引入力」をクリック
- 「収入」タブをクリック
- 取引日を入力
- 「取引例を探す」をクリック
- 取引内容に合ったものを選択
「取引例を探す」をクリックすると下記のウィンドウが開きますので、売上の内容にあったものを選択します。撮影料として報酬を貰っている場合は「写真の報酬の受け取り」という項目でOKです(「写真」でキーワード検索すると出てきます)。
「選択」ボタンをクリックします。
Q.取引日はいつにする?
撮影サービスの場合は、写真(撮影データ)の納品日を取引日とすることが一般的です。役務(=撮影サービス)の提供という意味では撮影日=取引日でも良さそうに感じますが、報酬は撮影行為そのものではなく納品物である写真(データ)に対して支払われますので、納品日とするのが自然です。
取引先は必須項目はありませんが、どの撮影の売上か分かりやすくするため入力しておくことをオススメします。個人相手の撮影の場合は下記のように〇〇様と入力しておきましょう。
2-2. 経費を入力する(領収書は紙で保存する場合)
次に撮影にかかった経費を入力します。
カメラマンの経費については下記の記事に詳しくまとめています。特にカメラやレンズなどの高額機材は金額によって経費になったり資産になったりしますので注意しましょう。
撮影日の交通費の計上を例に説明しますね。
- 「かんたん取引入力」をクリック
- 「支出」タブをクリック
- 「取引日」を入力
- 「取引例を探す」をクリック
「取引例を探す」をクリックすると下記のウィンドウが開きます。
交通費の場合、表示名に「電車」と入力し「電車賃」を選び、「選択」をクリック。
サラリーマンの経験がある人は、会社の経費精算で「旅費交通費」の科目で外出時の交通費を精算したことがあると思います。それと同じですね。
5. 科目に「旅費交通費」が表示されるので、金額を入力
6. 「登録」をクリック
摘要欄は「電車賃」と出ます。そのままでもOKですが、私はどこからどこへの移動だったかを追記するようにしています。
Q.摘要って?
科目に「消耗品費」とだけあっても、具体的に何に使ったか分かりません。そうなると、どの領収書の分の費用か?なども分からなくなるので、摘要には「具体的に何に使ったのか?」が分かるように書いておきましょう。書き方に決まりはありません。
カメラマンがよく使う経費
交通費の他にもよく使う経費をまとめましたので、こちらを参考に経費の記帳を進めてみてください。
かかった費用 | 選択する科目 |
---|---|
10万円未満の機材(カメラ・レンズ・ストロボなど) | 消耗品費 |
10万円未満のPC | 消耗品費 |
LightroomやCapture Oneなどの画像編集ソフト(サブスク型) | 通信費 |
LightroomやCapture Oneなどの画像編集ソフト(買い切り型) | 消耗品費 |
ネット回線 | 通信費 |
ポートフォリオ作成費用 | 広告宣伝費 |
名刺作成 | 消耗品費 |
ヘアメイクなどを自分の負担で手配した | 外注工賃 |
機材を修理に出した | 修繕費 |
電車・バスなどの移動 | 旅費交通費 |
レンタカーを借りた | 旅費交通費 |
レンタカーのガソリン代 | 旅費交通費 |
駐車場代(時間借り) | 旅費交通費 |
自家用車のガソリン代 | 車両費 |
駐車場代(月極で借りてる) | 地代家賃 |
2-3. 経費を入力する(領収書をデータで保存する場合)
2024年1月からは電子帳簿保存法が始まりますね。
領収書の取り扱いについては下記のようになります。
・PDF等の電子ファイルで受領したもの:電子ファイルのまま保存が必要
・紙で受領したもの:一定の要件を満たせばスキャンして保存可
電子ファイルで受領したものを紙に印刷して保存するのはNGになります。
紙で受領した領収書については、紙のまま保存する形で問題ありません。ただ、かさばって邪魔くさいですし、月毎にファイルに整理する手間などもあるので、全て電子保存してしまう方がオススメです。具体的な手順は下記の記事で詳細にまとめていますのでご確認ください。
Step3. 固定資産を登録する
10万円を超えるカメラやレンズなど高額の機材は固定資産として登録します。10万円未満は消耗品費として経費にしますので、注意しましょう。
また、固定資産の処理については「減価償却」を抑えておく必要があります。例えば、今年Canon EOS R5を50万円で購入したとしても50万円全てを今年の経費にはできません。法定耐用年数で割って処理することになります。法定耐用年数は品目ごとに決まっています(例えば、カメラなら5年です)。
減価償却の考え方やカメラマンに関連する固定資産の法定耐用年数は下記の記事にまとめています。
では、今回はカメラを買った場合を例に入力方法を紹介します。
ホーム画面の「設定」ボタンをクリックします。
「固定資産の登録」をクリック
新規登録をクリック
固定資産にチェックを入れて「次へ」をクリック
必須項目を次のように入力します。終わったら「次へ」をクリック。
科目……工具器具備品
資産の名称……「カメラ」「レンズ」など
取得方法……当年度に新しく購入した(※)
取得日……固定資産を購入した日
取引先……購入したお店(入力は任意です)
取得価額……購入時の価格
※上記の例は当年度に新しくカメラを購入した場合です。前から持っていたものなどは対応が変わります。
「定額法」を選択し「次へ」をクリック。
5年より3年で償却した方が1年あたりにかかったとされる費用が高くなるので、税金が安くなりますね。
・耐用年数……カメラやレンズは5年
・本年中の償却期間……自動で計算されます
・普通償却費……自動で計算されます
・事業割合……PCなど、その固定資産を私用と事業用の両方で使う場合の比率
カメラマンがよく使う耐用年数は下記にまとめています。
内容を確認して「登録」をクリック
固定資産の一覧に表示されたことを確認します。
ここまでで固定資産の登録は完了です。
カメラやレンズなどで10万円を超えるものを購入した際にはきちんと登録しておきましょう。
Step3. 確定申告に必要な書類を出力する
最後は確定申告に必要となる書類を出力します。
基本的にはここまでに入力した売上・経費・固定資産の内容に基づいて自動作成されます。「確定申告」メニューをクリックし画面に表示されたステップに沿って進めるだけなので簡単です。
左側メニューの「確定申告」をクリック。
申告方法を選択します。
Step2で収支内訳書、Step3で確定申告書を自動作成します。
お疲れ様です。これで確定申告の準備はバッチリですね!
確定申告を通じて自分の収支をきちんと把握しよう
いかがでしたでしょうか?
確定申告の準備はなかなか大変ですが、会計ソフトを使うと割とスムーズに進めることができたと思います。
最後にフリーカメラマンの皆さんへ。
確定申告などの会計業務はできればやりたくないですよね。人に任せて撮影に集中したい。その気持ちはわかります。ただ、カメラマンという仕事で生き残っていくためにはやはり適切な収益管理は必要です。
「大きい仕事が入りそうだから新しいレンズ買っちゃおう……」
「知り合いの知り合いだし安く請けてもいいか……」
ついついそんな事をしていないでしょうか?
頭の中で細かい計算をしている訳ではなく、何となくどんぶり勘定で物事を決めてしまうと収益に悪影響を及ぼします。「稼いでるようで全然稼いでなかった……」なんて事になりかねません。
確定申告のタイミングで自分がいくら売上を立てて、いくら経費に使っているのかをきちんと把握して、翌年の見直しに活かしましょう。カメラマンはかなりレッドオーシャンで大変な仕事です。
- 参入障壁が低く、プロとアマの境目がない
- 働き方改革で副業カメラマンも増えた
- Ourphotoなどの仲介業者の台頭
- AIの進化で一部の写真は不要になってきている
- 機材の価格も高騰している
などなど外部環境としてはかなり厳しいビジネスです。
故に会計をおろそかにするとすぐに成り立たなくなってしまいますし、裏を返すと、きちんと会計的な視点でビジネスを管理できているカメラマンは強いです。
是非、会計を武器にしましょう。